銀座で展示を巡った木曜日。
オールドバカラ展の前に行ったのは、
村岡貴美男展「閉架図書室」(ナカジマアート)
「ねむの木学園の子どもたちと宮城まり子作品展」(東京銀座画廊・美術館)
「閉架図書室」は、全ての作品が、分厚い板に描かれた絵(岩絵の具で)が絵本のように見開きに仕立てられた作品。
表紙は美しいエッチング。
忘れ去られた時間に巻き戻り、音のない声が聞こえてくるような静かな世界。
私はこんな静かな世界が好きです。
院展で観る村岡氏の大きな絵よりも好きだと感じました。
雰囲気を裏切らない風貌の村岡氏、在廊していました。
もう一つの展示。
私が幼稚園の教師をしていた頃、研修で静岡のねむの木学園に行ったことがありました。
隣接していた美術館での衝撃は今も忘れていませんでしたから、きっとまた、あの思いが甦るだろうと思って行きました。
やっぱり。
ずっと堪えて観ていたのだけれど、とうとう抑えきれなくなって、涙が溢れて止まりませんでした。
誰もいなかったら、ずっと心ゆくまで泣き続けたかった。
彼らの境遇に涙したのではないのです。
描きたいから描く。その衝動を抑えることなく、そして人の評価など全く影響されず(影響される子もいるのですが、私は影響されていないであろう絵に泣けるのです)
とにかく、描きたいから描く。その筆の純粋さ、なんて自分を大切にしているのだろう!そのことに激しく心を揺さぶられたのです。
30年前に訪れたときもそうでした。
私が個展を開いたとき、実家近くの知人のお嬢さんナミさんが観に来てくれました。
ナミさんは多摩美を出てデザイン事務所に勤めていました。
気がつくと、まだ若いナミさんが展示の片隅でハンカチを目に当てて泣いていました。
止めようにも止まらないという感じでした。
落ち着いてからナミさんが話してくれました。
「私は、本当は美弥子さんみたいなこういう絵が描きたかったの。でも、美大にいると、先生や周りの評価を得ることばかりに必死になって、素朴に絵を描いていた気持ちをなくしてしまった。ここには、本当に描きたい気持ちで描いた温かい絵があって、私は涙が止まらなかった」
私はねむの木の子どもたちの絵を観ながら、ナミさんに共感していました。
私も私のために描きたい。
そうそう、余談ですが、ナミさんは先日ママになり「親と子のアドラー心理学」を読んでくれています。
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