3つの詩
先日の詩は、震災に寄せて掲載されていたものでした。今回のは投稿です。
詩集が出てもなお、精力的に一般投稿されているんですね。
背負う 柴田トヨ 99歳
教科書を
風呂敷に包んで
学校に通っていた息子
私と母とで内職をして
ランドセルを
買ってあげた
母ちゃんありがとう
家中を
ランドセルを背負って
駆けまわっていた健一
あれから 58年
あなたは今
何を背負って
いるのかしら
(選者 新川和江)
この「朝の詩」が好きで、毎朝楽しみに目を通します。
気に入った詩は、どんな方が書いたのかなぁと、思いを巡らしながら切り抜いています。
その中から、二つの私の心を捕らえた詩を紹介します。
ひこばえ 高山泰基 21歳
一本の古木に
いかづちがおち
それは真っ二つに
引き裂かれた
木は苦しんだ
しかし やがて
木は静かになった
静寂のうちに
長い年月が過ぎ
今旅人が 一つの
小さな生命を見ている
天と地の矛盾に
引き裂かれた
その間に
(選者 新川和江)
21歳の青年が書いたことに心を動かされました。
辛い失恋をしたのだろうか、大きな挫折に苦しんでいるのだろうか・・・。
木は青年で、青年の心は引き裂かれるような苦しみにあるのだ。
それは泣き叫び、暴れ回るようなうねりだったのか、それとも身をよじりのたうちまわるような張り裂ける痛みだったのだろうか。
肩で息をしながら、やっと少しずつ冷静さを取り戻し始めた青年。
心に傷を負いながらも、青年は周りの静けさ、景色に気付けるようになっていく。
そして、自分の中に今までにはなかった新しい芽生えの予感を感じている。
青年はまた一歩大人になっていくのだろう。
「しかし やがて 木は静かになった」というところがとても好きです。
荒々しい苦しみもやがておさまり、青年は一つの階段を上りました。
勝手にそんな風に解釈して、とても感動していました。
でも今日、トヨさんの詩を切り抜いてはさむときに、この「ひこばえ」を読み返して、これがくしくも震災前日の3月10日に紹介されていたことに驚きを感じすにはいられませんでした。
この詩はまるで、今の日本、私たちに向けて書かれたかのようです。
今は引き裂かれる様な苦しみの中にある。
でもやがてゆっくりとそれは静かになり、長い年月を要しながら新しいい生命となって再生する。
そう語りかけてきます。
そしてもう一つ。
青空 安倉泰子 51歳
空はただ
見上げるものと
思っていた
あなたが亡くなる
この間までは
雲も 月も 星も
夕焼け 虹も
今は みな あなたの
ほほえみと映る
この空に見守られ
包まれて生きていく
(選者 新川和江)
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