『ある奴隷少女に起こった出来事』

『ある奴隷少女に起こった出来事』  ハリエット・アン・ジェイコブ著   堀越ゆき訳  新潮文庫





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この本は、約150年前にアメリカで書かれた自伝です。

しかし奴隷であった者がこのように知的な本を書けるはずがないと、

出版後に小説として扱われ、すぐに埋もれてしまいました。

それから120年後、歴史学者のイエリン教授が、

奴隷解放運動家が遺した古い書簡を読んでいた時

ジェイコブからの手紙が紛れ込んでいて、

そこから研究がなされジェイコブ自身が書いた本であることが判明したそうです。

そして本は小説ではなく事実であると証明され、アメリカでベストセラーとなりました。

奴隷と聞くと差別、強制労働、搾取、満足な教育を受けられない、虐待など

様々な迫害が浮かびます。

けれど、奴隷所有者による性的虐待がここまで当たり前に行われていたことは知りませんでした。

奴隷とその奴隷を所有する主人との間に多くの子どもが生まれていたのです。

それは奴隷にとってだけでなく、奴隷所有者の妻にとっても残酷な現実でした。

また、奴隷を所有できるだけの財力があり、

社会的に尊敬されるような職業につく

敬虔なキリスト教徒でさえ、

奴隷は彼らの道具としか思えなかったという事実。

現代の私たちだって、社会の流れの中で常識だと思っていることが

もしかしたらとんでもなくおかしなことなのに

わからなくなっていることがあるかもしれません。

例えば学校の中での小さないじめの芽。

パワハラやDV。

いつだって歴史から学ぶことは、

今起こっていることに流されず、

それが未来にどう展開していくかということを考えることでなくてはなりません。

しかし一方、ジェイコブ(本文ではリンダ。以下リンダ)の周りには、

人間の尊厳を忘れていない尊い人たちもいました。

奴隷制度に疑問を持つことすらできない人々がいる一方で、

身の危険を冒しても人間の尊厳を守ろうとする人々がいることは

私たちが生きていく上で深い勇気と感動を与えるものです。

その人たちのお陰と、リンダのダイヤモンドのように固い意志

リンダをやがて自由人にし、この本を後世にもたらすことができたのです。

それにしても、八方塞がりとしか思えない絶望の中でリンダが、

自分自身の尊厳を保ち、それを表明する勇気を持ち続けることができたことには

ただただ驚くばかりです。

絶望に押し潰されそうになりながら、

耐えに耐える日々は、想像を絶する苦しさに満ちていて

読むことが苦しくさえなりました。

リンダがこの本を書くことができたという

ただ一筋の希望の光を追いかけて読むことができました。

150年の時を超えて今甦った感動の書です。




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by housewife_life | 2017-11-05 17:37 | | Comments(0)